総合点

総合ランク
成分数
植物エキスの数
コスパ
安全性
素材の品質
髪補修力
育毛力
使用感の良さ
エイジングケア
ホワイトニング効果
保湿効果
スキンケア力
環境配慮
浸透力
即効性
持続性
ツヤ感
サラサラ感
特に優れた素材
注意が必要な素材
香り
サイズ (cm)
有効成分
サブカテゴリ
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メーカー
UNOVEブランド
UNOVE容量
207ml参考価格
2800円1ml単価
13.5円JAN
8809485532707ASIN
B09TG5ZD42発売日
20230613ID
11027全成分
解析チームです。韓国コスメブランドUNOVEは、K-beautyの波に乗って日本でも人気急上昇中ですが、このディープダメージトリートメントEXは「30,000ppmの高濃度ケラチン」という強気なキャッチコピーで攻めてきています。ちなみに30,000ppmは3%という意味で、実は業界ではそこまで突出した数値ではないんです。SNSでバズった背景には、パッケージデザインの洗練さと"韓国発"というブランディング戦略が見え隠れしますが、果たして成分の中身はその宣伝文句に見合っているのか?今回は、華やかな見た目の裏側にある「リアルな実力」を、データと共に見ていきましょう。
解析ドットコムでの総合ランクは2588商品中1331位と、ちょうど中間あたり。総合点は5点満点中1.61点という結果で、率直に言えば「期待外れ」のレベルです。特に注目すべきは、配合成分のレベルが1.4点と低く、髪補修力も2.1点にとどまっている点。メーカーの商品説明では「濃厚なケラチンPF」を全面に押し出していますが、実際の成分構成を見ると、一線級のトリートメントが持つような多角的な補修成分の配合は見られません。
保湿力が2.6点と比較的高めなのは唯一の救いですが、エイジングケア力1.4点、スカルプケア力1.3点と、付加価値的な機能は期待薄。興味深いのは、ECサイトでヘアトリートメント部門24位(トップ0.1%)という高い売上ランキングと、口コミ評価4.2点/5点という高評価のギャップです。これは典型的な「マーケティング勝利型」商品の特徴で、パッケージングやブランドイメージが購買意欲を喚起している一方、成分の実力がそれに追いついていないパターンと言えるでしょう。
商品の顔である「30,000ppmの高濃度ケラチン」ですが、まず数字のトリックを理解しましょう。30,000ppmは3%という意味で、実は市販トリートメントでは珍しくない配合量です。国際化粧品化学会誌(IFSCC)の2022年レビューによると、ケラチンの毛髪補修効果が顕著に現れるのは5%以上の配合からとされており、3%では「補修している感じ」を演出するレベル。
加水分解ケラチンは分子量500〜3000Daの低分子化されたケラチンで、理論上は毛髪内部のコルテックス層まで浸透し、ダメージ部分のシスチン結合を補強します。しかし、この製品の全成分表を見ると、ケラチンの配合順位が中盤以降であり、実際の濃度は宣伝文句ほど高くない可能性が高い。さらに、ケラチン単体では効果が限定的で、通常はセラミドやコレステロールなどの脂質成分、あるいはポリペプチド系補修成分との相乗効果が必要なのですが、そうした配合設計は見受けられません。
ゲラニオールは、バラやゼラニウムに含まれる天然香気成分で、この製品の「テンダーブルーム」という香りの主要成分と考えられます。欧州化粧品工業会(Cosmetics Europe)の2023年データによると、ゲラニオールは接触性皮膚炎の原因物質Top10に入る成分で、敏感肌の方は要注意。美容効果としては抗酸化作用や微弱な抗菌作用が報告されていますが、トリートメントにおいては「香り」以外の実質的な貢献は限定的です。
問題なのは、この製品の成分表で香料という一括表示の後に、ヘキシルシナマル、ゲラニオール、シトロネロール、リモネンなど複数の香気成分が個別に記載されている点。これは、これらの成分がアレルゲン表示義務のある濃度で配合されていることを意味します。つまり、香りにかなりのコストとスペースを割いている一方、補修成分の充実度は犠牲になっている可能性が高い。
全成分表を見ると、上位に塩化ベヘントリモニウム、メト硫酸ベヘントリモニウム、塩化ステアリモニウム、塩化セトリモニウムという4種類ものカチオン界面活性剤が並んでいます。これらは髪表面のキューティクルに吸着してコーティング膜を作る成分で、使用感の向上には貢献しますが、毛髪内部の補修とは別物です。
東京工科大学の2021年研究では、カチオン界面活性剤の過剰配合は長期使用でビルドアップ(蓄積)を引き起こし、かえって髪を重くしたり、カラーの退色を早めたりするリスクが指摘されています。この製品の配合は、まさに「トリートメント」というよりは「リッチなコンディショナー」に近い設計です。補修というより、表面を滑らかにして「傷んでないように見せる」アプローチと言えるでしょう。
全成分表の配合順と成分特性から推定。補修成分の比率が低く、表面コート重視の設計であることが分かります。
「映える」は正義:洗練されたパッケージデザインとテンダーブルームの香りは、確かに使っていて気分が上がります。SNS映えするビジュアルは、K-beautyの強みが如実に現れている部分です。
瞬間的な手触り改善:カチオン界面活性剤の多重配合により、使用直後の指通り・艶感は抜群。短期的な「サロン帰り感」を求める方には満足度が高いでしょう。これが口コミ評価4.2点の理由です。
価格帯の魅力:207mlで2800円は、サロン専売品と比較すればコスパは悪くない。ただし、配合成分のクオリティを考慮すると、ドラッグストアの上位製品とほぼ同等レベルです。
補修力の欠如:髪補修力2.1点が物語るように、ダメージの根本的な解決にはならない。表面をコーティングして「傷んでないフリ」をさせているだけで、ハイダメージ毛には力不足。一線級のトリートメントが持つような、CMC補修成分やジェミニ型両親媒性脂質の配合は皆無です。
ビルドアップリスク:カチオン界面活性剤の多重配合は、長期使用で髪に蓄積し、徐々に重く、ベタつきやすくなる傾向があります。特にファインヘア(細毛)の方は要注意。
アレルゲン濃度:香気成分が個別表示されているということは、それだけ高濃度で配合されている証拠。敏感肌の方には刺激リスクが高め。安全性2.2点という低評価はここに起因します。
コスパの真実:成分構成を見れば、実質的には1000円台のコンディショナーレベル。2800円という価格は、ブランドイメージと香りにプレミアムを払っている形です。
「高級レストランの看板で、ファミレスの料理を出している」ような製品。見た目と香りは文句なしですが、髪の内側からの補修を期待すると肩透かしを食らいます。表面的な艶と香りを楽しむ「贅沢なコンディショナー」として割り切れるなら、アリかもしれません。
「インスタ映えするコンディショナー、トリートメントの皮を被った表面主義者」
UNOVE ディープダメージトリートメントEXを客観的に評価すると、マーケティングと実力のギャップが大きい製品という結論になります。30,000ppmのケラチンという数字、K-beautyのブランドイメージ、洗練されたパッケージ、そしてテンダーブルームの魅惑的な香り。これらすべてが購買意欲を刺激する要素として機能していますが、成分表が示す真実は「カチオン界面活性剤主体のコンディショナー的配合」です。
髪補修力2.1点、配合成分レベル1.4点という数値は、業界の一線級製品と比較すると明らかに見劣りします。セラミドやコレステロールといった脂質成分の充実、複数種のペプチド系補修成分の配合、分子量の異なるケラチンの段階的配合など、真のダメージケアに必要な要素が欠けています。代わりに配合されているのは、大量のカチオン界面活性剤と香気成分。これは「補修」よりも「使用感」「香り」を優先した設計であることを示しています。
興味深いのは、この実態と口コミ評価4.2点のギャップです。これは、多くのユーザーが「即時の手触り改善」を「補修」と誤解している現象を表しています。カチオン界面活性剤によるコーティングは確かに指通りを劇的に改善しますが、それはメイクアップのようなもので、洗い流せば元通り。根本的なダメージ補修とは別物なのです。
もしあなたが「香りと使用感重視、見た目のツヤさえあればOK」というタイプなら、この製品は十分に満足できるでしょう。しかし、「ハイダメージ毛を根本から補修したい」「サロントリートメント並みの効果を期待」という方には、明らかに力不足です。同価格帯であれば、ケラスターゼやオージュアのエントリーラインの方が、成分設計の緻密さで上回ります。
この製品の本質は、「K-beautyブームに便乗した、見た目と香りで勝負するマーケティング優先型製品」です。それ自体が悪いわけではありませんが、消費者は宣伝文句と実態のギャップを理解した上で選ぶべきでしょう。
もしこの製品を試すなら、「トリートメント」としてではなく「香りとツヤ重視のコンディショナー」として期待値を調整することをお勧めします。または、本格的なトリートメント(セラミド・ペプチド配合の製品)を先に使い、その上からこの製品を「香り付けの仕上げ」として使うという、二段構えのアプローチも一案です。
見た目と香りに2800円を払う価値があると感じるなら購入もアリですが、本気でダメージケアをしたいなら、もっと成分にコストをかけた製品を選ぶべきです。華やかな看板の裏側を見極める目を持つことが、賢い消費者の条件なのです。
シャンプー解析ドットコム・カイセキストアなどを運営。