解析結果
総合点
総合ランク
成分数
植物エキスの数
コスパ
安全性
素材の品質
髪補修力
育毛力
使用感の良さ
エイジングケア
ホワイトニング効果
保湿効果
スキンケア力
環境配慮
浸透力
即効性
持続性
ツヤ感
サラサラ感
特に優れた素材
注意が必要な素材
香り
サブカテゴリ
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メーカー
株式会社NILブランド名
SUNA BIOSHOT(スーナバイオショット)容量
400ml参考価格
3300円1mlあたり
8.3円JANコード
4589406870371ASIN
B0BNHTG1K8発売日
20220704KaisekiID
10988全成分
解析チームです。NIL社が展開するSUNAブランド、「染めない白髪ケア」という挑戦的なコンセプトを掲げ、筑波大学との共同研究から生まれた特許成分「タラタンニン」を武器に市場に切り込んでいます。果たしてこの「SUNA トリートメント プラチナム」は、単なるダメージケア製品の枠を超え、頭皮環境そのものを再定義する野心作なのでしょうか?それとも、聞こえの良い言葉が並んだだけのプロダクトなのか?今回はその核心に、成分と科学的根拠から深く切り込んでいきます。
まず、このトリートメントの客観的な立ち位置を見てみましょう。全2588製品中155位、総合評価3.3点(5点満点)という数字は、一見すると「まあまあ良い」レベルに思えるかもしれません。しかし、ECサイトの売上ランキングでは上位5%に入る人気を誇っており、多くのユーザーに選ばれている事実があります。このギャップこそが、この製品の面白さの入り口です。
特に注目すべきは安全性評価が5.2点と、満点を突き抜けるほどの高評価であること。これは全成分41種という多さにもかかわらず、処方全体がいかに頭皮への優しさを考慮して設計されているかを示唆しています。一方で、製品コンセプトの核であるはずのスカルプケア力(2.8点)やエイジングケア力(2.5点)が伸び悩んでいるのはなぜか?この「高安全性・低スカルプ評価」という一見矛盾したデータが、この製品の真の価値を解き明かす鍵となります。この謎については、後ほどじっくり解剖していきましょう。
上のレーダーチャートは、本製品の性能プロファイルを視覚化したものです。「全体的な安全性」と「保湿力」が突出して高い一方で、「スカルプケア力」「エイジングケア力」が相対的に低いことが一目瞭然です。この特異なバランスが、従来のトリートメントとは一線を画す本製品のキャラクターを物語っています。
このトリートメントの個性を形作っているのは、間違いなくそのユニークな成分構成です。ここでは特に重要な4つのスター選手を、科学的根拠と共に深掘りします。
この製品の主役であり、「染めない白髪ケア」コンセプトの心臓部です。これは南米ペルー原産の植物タラ(学名: Caesalpinia spinosa)の莢から抽出されるポリフェノール。SUNAブランドの技術力の根幹を成すこの成分は、単なる植物エキスではありません。筑波大学との共同研究により、毛乳頭細胞の増殖を促し、さらにメラノサイト(色素細胞)におけるメラニン産生を促進する効果が示されています。2020年に学術誌『Planta Medica』に掲載された研究では、タラタンニンがメラニン生成に関わる酵素(チロシナーゼなど)や、生成されたメラニンを髪に輸送するタンパク質の発現を調節することが報告されており、白髪ケアへのアプローチに科学的な裏付けを与えています。これは、髪を黒く「染める」のではなく、髪が本来持つ色を生み出す力を「サポートする」という全く新しい発想です。
ダメージヘアの救世主とも言える、旭化成が開発した画期的な補修成分です。通称「ペリセア」は、ヤシ油由来の脂肪酸とアミノ酸から作られたジェミニ型(双子型)両親媒性物質。その最大の特徴は、約1分という驚異的な速さで毛髪内部に浸透し、ダメージを内側から補修する能力です。一般的なシリコンが髪の表面をコーティングして手触りを良くするのに対し、ペリセアは髪の強度そのものを向上させます。さらに、洗浄成分の刺激を緩和したり、他の有効成分の浸透を助けるブースター効果も併せ持つ、まさに八面六臂の活躍を見せる成分です。12歳でもわかるように言うと、「髪の毛の中に小さな修理屋さんが猛スピードで駆けつけて、壊れた部分を直してくれる」ようなイメージですね。
髪にハリとコシを与えるアンチエイジングポリマーです。これは、皮膚のバリア機能に不可欠な「セラミド」の構造を模倣して作られた成分。髪に塗布すると、このポリマーが柔軟で弾力のあるネットワーク状の被膜を形成し、髪1本1本に内側から押し上げるようなハリと弾力を与えます。これにより、年齢と共に失われがちな髪のボリューム感をサポートし、根元からふんわりとした若々しい印象へと導きます。ペリセアが内部構造を強化する「鉄筋」なら、セラキュートは髪にしなやかな弾力をもたらす「バネ」のような役割を果たします。
頭皮環境を健やかに保つ、縁の下の力持ちです。モハーヴェ・ユッカとも呼ばれるこの植物のエキスにはサポニンという成分が豊富に含まれており、古くからネイティブアメリカンによって様々な用途に用いられてきました。近年の研究では、このエキスが持つ優れた抗炎症作用が注目されています。2006年に学術誌『Journal of Inflammation』で発表されたレビュー論文によると、ユッカに含まれるポリフェノール(レスベラトロールやユッカオール類)が、炎症反応の引き金となる転写因子NF-κBの活性を強力に抑制することが示されています。これにより、頭皮の微細な炎症を鎮め、フケやかゆみを防ぎ、髪が健やかに育つための穏やかな土壌を整える効果が期待できます。
この製品最大のメリットは、「頭皮にメリットをもたらす攻めの機能性」と「敏感肌にも配慮した守りの低刺激性」という、本来トレードオフになりがちな二つの要素を高いレベルで両立させている点にあります。通常、トリートメントの滑らかな使用感は、4級カチオン界面活性剤(〜クロリド、〜ブロミドなど)によってもたらされますが、これらはタンパク質変性作用があり、頭皮に付着すると刺激やトラブルの原因になり得ます。この製品もベヘントリモニウムクロリドなどを含みますが、配合順位や処方全体のバランス、そしてペリセアの刺激緩和効果によって、極めてマイルドな使用感を実現しています。これは安全性評価5.2点という驚異的なスコアが証明しています。
その上で、ただ優しいだけでは終わりません。主役のタラタンニンが白髪の根本原因にアプローチし、ユッカエキスが頭皮の炎症をケアする。これはもはや単なるトリートメントではなく、「洗い流す頭皮用美容液」と呼ぶべき代物です。即効性のあるペリセアとセラキュートが髪のダメージを補修し、指通りとハリ・コシを改善しつつ、長期的視点で頭皮環境そのものを育てていく。この二段構えの戦略こそが、SUNAトリートメントの真骨頂です。
一方で、率直に指摘すべきデメリットも存在します。まず、「これを使えば白髪が黒髪に戻る」という魔法のような効果は期待できません。タラタンニンの作用は、あくまでこれから生えてくる髪の色素生成を「サポート」するものです。2013年に南カリフォルニア大学の研究者が発表した論文が示すように、毛髪の再生は複雑な毛周期の中で行われます。効果を実感するには、最低でも数ヶ月単位で継続使用し、頭皮環境をじっくりと整えていく必要があります。白髪化のメカニズムは、2023年のニューヨーク大学の研究で「色素幹細胞(メラノサイト幹細胞)が毛包内で特定の場所に留まってしまい、機能不全に陥ること」が原因の一つとして指摘されるなど、非常に複雑であり、一つの成分で全てが解決するほど単純ではないのです。
そして、これが冒頭で提示した「評価の謎」の答えに繋がります。スカルプケア力やエイジングケア力のスコアが低いのは、タラタンニンのような「未来への投資型」成分の効果が、既存の評価ロジックでは十分に点数化されにくいためだと考えられます。現在の評価は、即効性のある補修力や保湿力に重きが置かれがちです。つまり、製品が革新的すぎるあまり、評価指標がその真価を捉えきれていない可能性があるのです。これは製品の欠点というより、我々評価する側の課題と言えるかもしれません。
このトリートメントを一言で表すなら、「派手な一発逆転ホームランを狙う助っ人外国人ではなく、じっくりとチームを育て上げ、常勝軍団を作り上げる名監督」です。目先の勝利(=手触り)も確実に掴みつつ、その本質は数年後を見据えたチームの土台作り(=頭皮環境の育成)にあります。
低刺激という安全な土台の上で、ペリセアとセラキュートが即効性のある補修とハリ・コシを与え、使用感を満足させる。その裏で、主役のタラタンニンとユッカエキスが、長期的な視点で白髪や頭皮のエイジング悩みに静かに、しかし着実にアプローチする。このクレバーな処方設計は、まさに専門家をも唸らせる見事な仕事です。
しかし、ここで自問自答してみましょう。我々は「染めない白髪ケア」というキャッチーな言葉に、少し踊らされすぎてはいないでしょうか?この製品の真の価値は、白髪という一点への効果以上に、加齢やストレスによって引き起こされる頭皮全体のコンディション低下を緩和し、髪が健やかに育つための「土壌」そのものを根本から改善することにあるのかもしれません。白髪という一点に固執すると、そのより大きなポテンシャルを見誤る危険性はないでしょうか。この視点を持つことで、製品との付き合い方も変わってくるはずです。
目先の指通りやツヤだけでなく、5年後、10年後のご自身の髪と頭皮の未来に本気で向き合いたいと考える、知的なあなたにこそ、この「育てるトリートメント」を試す価値があるでしょう。
シャンプー解析ドットコム・カイセキストアなどを運営。